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2022年10月から短時間労働者への社会保険が適用拡大に

2021.11.22 人事・労務

2020年5月に成立、6月に公布された「年金制度改正法(年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律)」によって、2022年10月から段階的に短時間労働者への社会保険加入条件が拡大することが決まりました。
これにより、企業は現行との違いを踏まえつつ、法改正後に備えた対応を迫られることになります。
この記事では、現行と法改正後の短時間労働者の社会保険加入条件の違いと、社会保険適用拡大に向けて必要な社内準備について解説します。

目次

週の所定労働時間および月の所定労働日数が正社員の4分の3以上
5つの要件を満たす

①事業所の規模
②労働時間要件
③勤務期間要件

1.短時間労働者とは

2022年10月から短時間労働者への社会保険適用が拡大されますが、そもそも「短時間労働者」とはどのような働き方の人を指すのでしょうか。
パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)では、その対象である短時間労働者を、「1週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用される通常の労働者の労働時間に比べて短い労働者」としています。
この「通常の労働者」とはフルタイムで働く正規雇用の労働者のことで、それより労働時間が短い労働者はすべて「短時間労働者」となります。パートタイマー、アルバイト、契約社員、臨時社員、準社員、嘱託など雇用形態の違いは関係ありません。

2.現行の短時間労働者の社会保険加入条件

現行の短時間労働者の社会保険加入条件は、2016年10月から開始されたものです。ここで、現行の加入条件2つについておさらいしておきましょう。

週の所定労働時間および月の所定労働日数が正社員の4分の3以上

健康保険法第3条第1項および厚生年金保険法第12条によって、「週の所定労働時間および1カ月間の所定労働日数が通常の労働者(正社員)の4分の3以上である短時間労働者は、社会保険の被保険者資格を取得する」とされています。これを「4分の3要件」と言います。
例えば週の所定労働時間で考えた場合、
正社員の1週間の所定労働時間が8時間/日×5日=40時間
40時間×3/4=30時間
となるので、週の労働時間が30時間以上の短時間労働者は社会保険の加入対象となります。

5つの要件を満たす

短時間労働者の社会保険加入条件は、原則「4分の3要件」を満たした方ですが、それ以外でも以下の5つの要件を全て満たした場合は社会保険の被保険者となります。

  • 1)週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 2)雇用期間が1年以上見込まれること
  • 3)賃金の月額が88,000円以上であること
  • 4)学生でないこと
  • 5)特定適用事業所または任意特定適用事業所に勤めていること ※

※「特定適用事業所」とは、短時間労働者を除いた社会保険の被保険者が6カ月以上500人を超える事業所。「任意特定適用事業所」は、社会保険の被保険者が500人以下の事業所で、短時間労働者の社会保険加入について労使合意を行った事業所を指します。

3.【2022年10月以降】社会保険適用拡大による3つの変更点

「年金制度改正法」では、2022年10月から段階的に短時間労働者の社会保険加入の適用を拡大することを定めています。それに伴って、対象となる事業所の規模、労働時間の要件、勤務期間の要件の3つに変更が加えられます。

①事業所の規模

これまで短時間労働者の社会保険加入義務があるのは、社会保険の被保険者が常時500人超規模の事業所でしたが、2022年10月からは100人超の事業所、2024年10月からは50人超規模の企業まで適用が拡大されます。
ただし、適用の判断基準になる従業員数は「法改正が適用される前の被保険者数」となり、保険未加入の短時間労働者を除いた数となるので注意しましょう。
例えば従業員数110人の事業所でも、正社員80名・アルバイト(保険未加入者)30人の場合は、社会保険加入者数は80人となるので2024年10月からの適用枠に該当します。

②労働時間要件

短時間労働者の保険加入要件のひとつ「週の労働時間20時間以上」も判断基準が変更になります。
週20時間という数字自体は変わりませんが、判断する基準が「実労働時間」から「契約上の所定労働時間」に変更になります。突発的に生じる残業などを含めずに手配できるようになるので事務手続きの効率化が期待できるでしょう。

③勤務期間要件

現行では継続して1年以上雇用する見込みの短時間労働者が対象となっていますが、改正後はフルタイムの被保険者と同様に「雇用期間が2カ月を超える見込み」の労働者に変更されます。
業種にもよりますが、学生以外のほとんどの短期時間労働者が対象となるでしょう。今後はパートアルバイトでも、雇用する際は社会保険加入がスタンダードになるかも知れません。

4.社会保険適用拡大に向けて社内で準備すべきこと

2022年10月からの短時間労働者の社会保険適用拡大に対して、社内で準備すべきことを解説します。

加入対象者を把握する

まずは新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者を把握しましょう。会社が負担する社会保険料がどのくらい増えるのか試算したい場合は、厚生労働省が提供する「社会保険料かんたんシミュレーター」が便利です。
企業はコロナ禍での対応を迫られることになるため、必要に応じて、社会保険労務士などの専門家に無料相談できる制度や助成金も活用できます。

加入対象者に通知する

新たに社会保険加入の対象となるパート、アルバイト、契約社員などの短時間労働者に対して、法律改正の内容を通知しましょう。社内イントラやメールを活用し、全員に確実に周知します。

説明会や面談を実施する

周知だけでなく、説明会や個人面談の機会をもち、対象者の不安や疑問を解消することも大切です。個人面談を行う場合は、次の3点を伝えましょう。

  • ・社会保険の新たな加入対象者であること
  • ・社会保険の加入メリット
  • ・今後の労働時間について

社会保険の加入メリットは下記2点が挙げられます。「従業員向けのガイドブック 」の活用もおすすめです。

  • ・基礎年金に厚生年金が上乗せになる(年金が2階建てになる)
  • ・傷病手当金や出産手当金などの医療保険が充実する

2022年10月5日までに届書を申請する

従業員数が101~500人の企業には、2022年8月までに日本年金機構から社会保険適用拡大の対象となることを知らせる通知書類が届きます。2022年10月5日までに「被保険者資格取得届」を作成して、オンライン申請をしましょう。
※参考1:日本年金機構「被保険者資格取得届」の届出に関するご案内
※参考2:日本年金機構「オンライン申請に関するご案内」

5.まとめ

年金制度改正法の成立により、2022年10月から短時間労働者への社会保険の適用拡大が2段階で行われます。現行と法改正後の対象者の違いを理解し、自社に何名短時間労働者がいるのか、どのような準備が必要なのかを確認しておきましょう。
加入対象者には通知を行い、事前に加入メリットを伝えることが大切です。社会保険の適用拡大を見据えた経営や労務管理を心がけましょう。

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